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Spring 2006 Vol.8
吉田 健一
(よしだ けんいち)
戦略コンサルティング会社を経て、リアルコム社BCGディレクター。KM・情報共有・企業変革コンサルティングをソニー、NTT、丸紅等の国内外の大手企業に対して手がける。
情報マネジメントがもたらす個と組織の能力向上
~ 情報洪水・コンプライアンス時代の情報戦略とは ~
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ビジネスコンサルティンググループ ディレクター
吉田 健一
イントラネット・グループウェアが整備されてから早10年。あふれかえる情報洪水と迫り来るコンプライアンスの波を受け、企業の情報戦略は大きな転換期を迎えようとしている。「情報共有」の次なる概念として注目されつつある「情報マネジメント」について事例をもとに解説する
1.なぜ今、情報マネジメントか
情報洪水に溺れて
あなたは、1日何通メールを受信しているだろうか。図1は、ある機械メーカーA社における調査結果であるが、A社社員は平均して1日60通のメールを受け取っている。メール1通読むのに1分かけると1時間、返信も入れればあっという間に2時間近くの時間がメールの処理で消えてしまい、業務を行うどころではなくなってしまう。これがすべて重要なメールなら良いのであるが、実は60通のうち本当に自分宛に来ている社内メールは6通で、それ以外は他の人宛に送られたメールのCC(カーボンコピー)や全社一斉同報メール、スケジューラーから自動的に送られてくるメールだという。これでは本当に必要なメールはゴミメールに埋もれてしまい、見落とされる可能性が高い。こうして受信者はメールをきちんと読まなくなり、発信者はメールを送っても反応してくれないので更に確認メールを送る・・・こうした「メール洪水」はA社に限らず、今や社会的な問題にすらなりつつある。
もう一つ、「情報洪水」の例を見てみよう。消費財メーカーB社では情報共有を進展させるために共有ファイルサーバーを導入した。最初は個人間でファイルが共有できて便利と好評だったが、各自が勝手にフォルダを作ったためにフォルダが乱立、今ではフォルダ数5万、フォルダ階層16階層、ファイル数15万、とファイル情報の洪水に陥った。これでは情報を探すのは「干し草の山から針を見つける」より難しい。あなたの会社のファイルサーバーも、このような状態に陥っているのではないだろうか。
メール、ファイルサーバー、イントラネット、共有データベース・・・オフィスワーカーの生産性を向上させるべく90年代後半から次々と導入された情報共有基盤。その便利さは情報量の増加を生み、一定の成果を見せた。しかしその便利さが両刃の剣となって無秩序な情報洪水を生み、逆にオフィスワーカーの生産性を低下させつつある。これが「情報の量と質のパラドックス」である(図2)。
情報が少ない時点では情報量が増えると、意思決定の質やスピードが増加し業務の質が向上する。しかし、ひとたび情報量が個人の情報処理能力を超えてしまうと、更なる情報量の増加は全ての情報をゴミにしてしまい、逆に業務の質は低下してしまう。
実際、今日のオフィスワーカーはその時間の大半をあふれかえる情報の処理に費やしている(図3)。
今日の平均的なオフィスワーカーは1日の業務活動時間のうち50%をPCの前で過ごし、そのうち「資料作成」「情報検索」「メール処理」といった「情報処理」作業に業務時間の約40%を費やしている。そしてその時間は日を追う毎に増加しているのである。
コンプライアンス:日本版SOX法の衝撃
情報に関してもう一つ大きな悩みの種が出てきた。コンプライアンスである。情報セキュリティ、個人情報保護と矢継ぎ早に突きつけられるコンプライアンスの要求は、リスクという視点から情報の重要性を高めてきた。そして2007年に施行予定の日本版SOX法は、これまでより高度な情報管理を求めてくる。情報セキュリティも個人情報保護も、あくまで「情報を守る」という「ブレーキ」の話であった。しかし、SOX法で求められる要件は、それほど単純ではない。図4はSOX法の前提とされているCOSO1フレームワークである。
このうち情報と関係があるのは「情報と伝達」「モニタリング」の2つである。「情報と伝達」とは、「経営者、従業員が適切な情報を組織の壁を超えて適時に把握できること。コミュニケーションが隅々まで行き渡り良い情報・悪い情報が共有されること。」であり、「現場で起きた不祥事を瞬時に経営者が把握している」というようにいかに社内に最適な人に最適な情報を流通させるかということが求められる。一方「モニタリング」とは「業務がルール通りに行われているかチェックする」ことであり、前述の通りPCや情報共有ツール上で業務処理の大半が行われている今日、そうしたツールでのチェック機能やルール違反をモニターし注意を喚起する、といったことが求められるのである。すなわち、SOX法の環境では、情報流通の「ブレーキ」はもちろんのこと、情報流通の「アクセル」も用意し、「ブレーキ」と「アクセル」の巧みなバランスを取る、ということが求められているのである。
1)1992年にCOSO(米国トレッドウェイ委員会組織委員会)が発表した内部統制のフレームワークのこと。米国SOX法、日本版SOX法のベースとなると考えられている。








