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Summer 2004 Vol.3
吉田 健一
(よしだ けんいち)
CMO(最高マーケティング責任者)
戦略コンサルティング会社を経て、リアルコム社CMO(最高マーケティング責任者)。KM・情報共有・企業変革コンサルティングをソニー、NTT、丸紅等の国内外の大手企業に対して手がける。
情報資産棚卸がもたらすオフィスワーカーの生産性向上
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CMO(最高マーケティング責任者)
吉田 健一
近年のIT化は情報の混乱・混沌状態を生み出し、「情報が膨大にありすぎて、何がどこにあるのかわからない」「様々なITツールが乱立しており、使い方の切り分けがされていない」「情報が陳腐化しておりゴミが多く、信頼して使える情報がない」といった問題を引き起こしている。こうした状況に対し、社内に膨大に存在する情報資産を棚卸することでホワイトカラーの生産性を向上させる手法が、注目を集めている。本稿では、情報のトヨタ生産方式と題し、情報資産棚卸の方法論を事例と共にご紹介していきたい。
1. なぜ今、情報資産棚卸か
生産性向上の見果てぬ夢
オフィスワーカーの生産性向上がビジネスの至上命題になって久しい。製造現場の生産性向上は60年代のTQC/TQM やカイゼン活動に始まり、製造以外の調達、物流、販売といった業務に対しても90年代に一世を風靡したBPR によって抜本的な業務改善が行われ、生産性の向上が図られてきた。こうして現在では、製造、調達、物流、販売の各分野における生産性向上の取り組みは一巡し、「乾いた雑巾を絞る」状況になりつつある。
最後に残された「巨大な荒野」が、オフィスワーカーの世界である。オフィスワーカーとは工場等の現場作業従事者、店舗等のサービス従事者以外のオフィスを中心に働く従業員のことを指す。このオフィスワーカーが、今日のビジネスにおいて最も重要な位置付けにあることは疑いようはないだろう。
オフィスワーカーの生産性向上についても、古くは業務改善活動に始まり、「ワークアウト」や「シックスシグマ 」、最近では「ABC(Activity Based Costing)/ABM(Activity Based Management) 」、「BSC(Balanced Score Card) 」といった考え方が生み出され、オフィスワーカーの業務に適応しようとされてきた。こうした手法は、個別課題において成果を出しつつあるものの、生産性向上の決定打にはなっていないのが現状である。
オフィスワーカーが抱える課題

それでは、情報資産棚卸はどのようにしてオフィスワーカーの生産性を向上させるのか。当社が大手企業22社を対象に行った調査によれば、オフィスワーカーの一般的な活動は図1のようになり、業務の半分近くをPCの前で過ごしている。そしてそのPC利用時間の大半が「資料作成」「情報収集・検索」「連絡・通知・情報発信」に費やされており、結果的に全業務時間の38%が情報関連の活動をしていた。情報資産棚卸とは、このオフィスワーカーの業務の大部分を占める情報関連の活動にメスを入れ、効率化を実現しようという新しい試みである。
オフィスワーカーの情報関連の活動はどのような課題を抱えているのだろうか。図2は、同調査においてオフィスワーカーがどのような課題を抱えているかを、情報作成者・情報利用者の両側面から示したものである。
情報作成者の業務を見ていくと、まず作成業務そのものが非効率である場合が多い(「(1)非効率な情報作成」)。必要な情報が手に入りにくい、類似資料が入手できないことで、作成業務が非効率になるケースである。また、テンプレートや雛型が整備されていないために、毎回ゼロから資料作成を行っているといった事態もよく見受けられる。
また、「そもそも、本当に必要な情報を作っているのか、無駄な情報を作っているのではないか」というポイントもある(「(2)無駄な情報作成」)。基幹業務はBPRの波を受け、ある程度効率化・最適化されている企業が多いだろうが、こと情報作成業務については「本当に必要か」という視点で見直しが行われているケースは少ない。「資料の質や量が過剰。もっと簡素な資料を作ってもいいはずだ。」「他の部門と重複した資料を作っている」「この資料でうちの役員は喜ぶかもしれないが、お客様に価値を与えていない」といった社内の声に同意される方も多いはずである。
次に、情報利用側の業務に関する課題をみていくと、そもそも情報が利用できる形で存在しないことが多い。すなわち、情報を文章に落としたり、他人が利用できる形に「資産化」されないという問題がある(「(3)情報の資産化」)。情報が利用できる形で存在しないかぎり、情報活用はおぼつかない。また、「部門の壁が高く、部門を越えて情報が公開されない」という情報公開の問題を抱えている会社もあるだろう(「(4)情報の公開」)。
さらに、情報が存在しているとしても、その情報にアクセスできない、という状況もある。社内に情報が膨大にあるがゆえに欲しい情報にたどり着けないという問題である。「情報が情報発信者側の理論で整理されている」「情報が的確に分類されていない」「検索の仕組みがない」といった理由が、情報アクセスの非効率を生み出している(「(5)情報のアクセス」)。
そして、なんとか情報にアクセスできたとしても、その情報が的確に管理されていないため、情報を活用できない、といった情報の管理・品質保証の問題もある(「(6)情報の品質保証」)。情報が正確なのか、最新なのか、オーソライズされた情報なのか、といったことが不明であれば、せっかく入手した情報を活用することはできない。
こうした状況は、情報を蓄積しているITツール環境が混乱し、混沌としていることに起因していることが多い。「ファイルサーバーにフォルダが無数にあって必要な情報にたどり着けない」「ノーツのデータベースがたくさんありすぎて何がどこにあるかわからない」といった状況だ。例えば図3は、大手金融機関のA社が全社共有で活用している情報フォルダ構造であるが、全部で7階層、2,000のフォルダに7万の情報が分散して蓄積されている。情報を探す人は、このフォルダを一つ一つ開けていきながら、欲しい情報を見つけ出すわけであるが、この中から必要な情報を探すことは「干し草の山から針を見つける」ようなものであり事実上不可能だ。耳が痛い方も多いはずである。
本来オフィスワーカーの生産性を向上すべきITツールが、逆に生産性を下げるような結果をもたらしているところに、奇妙なパラドクスがある。ITツールが導入される前の「紙の時代」では、実は情報は整理・整頓が実現されていた。年に一度はファイルやキャビネットの掃除をしたり、毎月不要な文書を捨てたりといった活動を日常茶飯事に行っていたのを覚えている方も多いだろう。
しかし、紙のファイルが消え、情報が電子化されてからは、その物理的・空間的制約が事実上無限になってしまったため、情報を整理・整頓したり、不要なファイルを更新・廃棄したりすることはなくなってしまった。ITツールの導入によって、管理コストが低下したかのように見えたが、結果的には情報収集・利用業務が非効率になってしまったのである。こうした課題を抱えている企業は、早急に情報資産の棚卸を実施すべきである。








