- 現在位置
- トップ > 事例・レポート > ホワイトペーパー 『VISION』 > 建設業界のナレッジマネジメント
Summer 2004 Vol.3
在賀 耕平
(ありが こうへい)
プリンシパルコンサルタント
慶應義塾大学商学部卒
リアルコムにおいて情報共有、ナレッジマネジメントコンサルティングを大手商社、大手SIer、応用地質等の国内大手企業に対して手掛ける。
建設業界のナレッジマネジメント
------------------------------------------------------
ビジネスコンサルティンググループ プリンシパルコンサルタント
在賀 耕平
建設業界は今、「団塊世代の引退問題」「プロジェクト遂行能力の衰退」「競争の激化」など様々な課題に直面している。ナレッジマネジメントはこれらの課題を解決するのに適したツールである。本稿では、課題解決をするためにはナレッジマネジメントをどのように行えばいいのかを、先進企業の例を紹介しながら、解説していく。
1. 建設業界にナレッジマネジメントが必要な理由
建設業界の動向
20世紀、日本の成長を支えてきたのは建設業界だといって過言ではないだろう。道を造り、橋を渡し、建物を築き、広く日本の産業に貢献をしてきた。日本の経済発展と同期して、建設業界も成長してきたとも言える。しかしバブル崩壊後、様相が変わってきた。まず図1を見ていただこう。建設業界の売り上げ全体を年ごとに追ったものである。92年にピークであった売り上げは徐々に低下し、2004年ではピーク時の6割まで落ち込んでいる。そうした建設不況の中で、建設業者の倒産が相次いでいるが、図2を見ると許可業者数は92年以降売上に比例して減少しているわけではない。業界全体のパイは減っているのに、パイを食べようとしている業者の数は増えている。競争が激化しているのだ。
また、建設業界においては高齢化が進んでおり、技能労働者が不足する懸念が出ている。総務省の「14年労働力調査」を基にしたデータによると、建設業で45歳以上が占める割合は51.1%。昭和55年~平成14年までの年齢階級別構成比の推移を見ても65歳以上が増加傾向にある一方で、35~44歳、15~24歳が減少傾向を示しており、「若年層の減少と高齢化」が進んでいることを裏付けている。
このような厳しい状況の中、建設業界ではナレッジマネジメントに注目が集まっている。なぜだろうか?
プロジェクト遂行能力の維持
まず1つには、建設業界では不況の煽りを受けて、より安いコストでプロジェクトを遂行する必要に迫られているという背景がある。コストを安くしようと思えば、当然プロジェクトごとの人数を削らざるを得ない。建設業界では技術の伝承をプロジェクト内・現場でのOJT(On the Job Training)によって行ってきた。以前であればプロジェクトごとに人員に多少余裕があったため、ベテランが若手に技術の伝承を行うことができていた。しかしプロジェクトごとの人数を多く割けなくなっている状況では、現場に余裕をもって人を配置することができない。そのため効果的なOJTがおこなわれておらず、技術の伝承がおろそかになっている。
泣きっ面に蜂で、ノウハウ・技術を持っている団塊の世代が今後数年で大量に引退を始めてしまう(2010年問題)。このままではベテランから若手技術者に技術が伝承されずに、まともにプロジェクトを遂行することすら危ぶまれてしまう。建設業界が今まさに抱えている「技術の伝承」「プロジェクト遂行能力の維持」という課題を解決するのに、ナレッジマネジメントというツールは有効に機能する。
競争力の強化
ナレッジマネジメントが不可欠な要素である理由のもう1つが、競争力強化の必要性である。冒頭で説明したように、建設業界は既に過当競争になっている。この厳しい状況で勝ち残るためには、自社の強みを生かし、パイを確保していかなければならない。では競争力の強化とはいったい何を指すのだろうか。建設業界では近年特に「ソフト化・サービス化」といったキーワードが出てきている。
今までのように設計施工だけではなく、川上・川下領域へ参加する企画提案能力、エンジニアリング能力が問われるようになっているのだ。今までは設計施工能力を高めていくことが受注につながっていたが、今後は顧客のニーズを探り、顧客が本当に求めているものを提案していくことが必要になってくる。そのためには、それぞれの部署がばらばらに動いていたのでは話にならない。部署・部門を越えて様々な知恵を出し合い、議論し、顧客への提案力を高めていく必要がある。そして部署・部門の壁を越えて共同作業を行っていくというのもナレッジマネジメントが得意とする分野である。
建設業界がまさに今、抱えている課題を解決するのに、ナレッジマネジメントはうってつけのツールであることはご理解いただけたと思う。しかし、「そうはいっても何をやっていいのかピンと来ない」という方もいるだろう。以降では、問題解決の方法論を示しながら、先進企業の事例を紹介する。今あなたの会社が抱えている課題に対して、何をすればいいのか考えるきっかけになれば幸いである。










