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取り組み紹介:日揮株式会社様
林 宏典
(はやし ひろのり)
ジョージワシントン大学 プロジェクトマネジメント学科修了
総研系コンサルティング会社を経てリアルコムに参加。石油探鉱・開発、ソフトウェア開発などプロジェクト型産業でのナレッジマネジメントに強い。
研究開発の生産性革新を加速する組織構造・空間構造
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ビジネスコンサルティンググループ
林 宏典
協力・監修:日揮株式会社
第二プロジェクト本部プリンシパルアーキテクト
糀谷 利雄 様
本稿では、物理的な人の出会いを研究施設設計という観点から取り組んでおられる日揮株式会社(以下、日揮)の取り組みをご紹介したい。リアルコムが日々ご紹介しているITを活用して地理的、時間的な分散によるデメリットを回避するバーチャルな人の出会いの使いどころが、リアルな構造物視点での考え方との対比によりさらに深く理解いただけるものと考える。
日揮では、多くの方がイメージされる工場やプラントだけでなく、研究開発施設の設計も手がけている。しかも、単に建物を造るという領域を超えて、革新的な研究開発をもたらすためのコミュニケーションへの深い配慮がちりばめられている。
例えば、ファンケル社の中央研究所(1)では、1997年頃に全社的な課題となっていたビジネス成長の壁を打破するための革新的研究開発を意図し、2年ほどの歳月をかけて完成した。「ワンファーム」と称した俊敏な組織形態運営にあわせた、オープンな設計となっており、ガラスの壁もなく居室から上下階まで見渡せる大きな吹き抜け(2)や、研究所で最も大きなスペースである食堂でも開放感を追求するなど、一貫してオープンな雰囲気の演出を行っている。さらに、アルコーブ(3)と呼ばれるくぼみを廊下に配置することで、研究者同士の偶発的な出会いを支援し、込み入った話をすれ違いざまにしやすい環境を提供している。

また、アステラス製薬が総工費約300億円をかけて、刷新したつくば市の御幸が丘研究センター(4)では、「有益な不便」をあえて設計コンセプトに埋め込んだ。増築分を含め7棟の研究棟をつなぐ居室棟は、研究者同士が常に顔を合わせ、情報交換を密にできるインタラクション性を追求している。意図的にコミュニケーションを誘発させる仕掛けを優先し、「実験室への移動距離が長い」と不満をもらす研究者の意見をおさえ、全体的な研究の効率化と高質化を図る目的で設計された。

これらの研究開発施設設計のよりどころとなっているのが、マサチューセッツ工科大学トーマス・J・アレン教授の「Managing the Flow of Technology」をはじめとする調査研究結果である。出版から20年ほど経過しても色あせることのないコンセプトを発展させ、BMW社をはじめとする最新の事例を盛り込んだ書籍が日本語訳でも出版されているので、ご興味のある方はご一読されることをお勧めする。(「知的創造の現場」(ダイヤモンド社))
トーマス・アレンの理論をごく簡単に説明するならば、コミュニケーションの重要性を組織設計と空間設計の観点で整理したものといえる。
- コミュニケーションは唯一で最大の知的生産性を高める要素であり、高い成果を上げたグループは、多くの時間をコミュニケーションに費やしている
- 研究開発のイノベーションにとって最も重要な概念は気づきである。気づきの80%以上はコミュニケーションから生まれる
組織や空間設計の観点に重きを置いているのは、コミュニケーションにより伝わる「情報」の中でも、顔を合わせて直接会話する中での0次情報が創造性や生産性の向上に大きく寄与すると結論づけていることによる。0次情報が流通されるための要件はシンプルで、情報を伝えたいと思う人と情報が欲しい人が出会わなければならないのである。(図1)

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