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在賀耕平

在賀 耕平
(ありが こうへい)

プリンシパルコンサルタント
慶應義塾大学商学部卒業。リアルコムにおいて情報共有、ナレッジマネジメントコンサルティングを大手商社、大手SIer、応用地質等の国内大手企業に対して手がける。共著に「SNSビジネスガイド」(インプレスジャパン)

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エンタープライズ2.0は本物か?
~ Web2.0との本質的違いと新たな萌芽 ~

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ビジネスコンサルタントグループ プリンシパルコンサルタント
在賀 耕平

 Web2.0というキーワードが世をにぎわす中で、企業内情報システムも「2.0」へと進化させていくという「エンタープライズ2.0」が注目されている。Blog、Wiki、SNS等の導入は「エンタープライズ2.0」の序章に過ぎず、大きな変革の可能性を秘めている。本稿では、幾つかの先進事例を紹介しつつ、「エンタープライズ2.0」の姿を明らかにしていく。

1.エンタープライズ2.0とは何か

イントラブログはエンタープライズ2.0か

 Web2.0という言葉が世に氾濫して久しいが、もう一つ最近話題になっている「2.0」が「エンタープライズ2.0」である。「エンタープライズ2.0」とは、巷をにぎわす「Web2.0」のテクノロジーやコンセプトが、企業―エンタープライズの情報基盤をも「2.0」に変えてしまうという話だ。

 既に、イントラブログや企業内SNSの取り組みを始めている会社も多いだろう。SocialText1等の企業向けブログ・Wikiベンダーや、Zimbra2等のWeb ASPサービスの会社が「我こそはエンタープライズ2.0」と、声高に叫んでいる。

 果たしてWeb2.0の波は本当にエンタープライズをも飲み込んでしまうのだろうか?社内の情報共有は全てブログやSNS、Wikiで行われるようになるのだろうか?GoogleはMicrosoftを打ち負かしエンタープライズの覇者になるのだろうか?

 リアルコムはインターネットで発祥したテクノロジーやコンセプトを企業内に定着させる仕事に長らく関わってきたが、エンタープライズの世界はそれほど甘くはない。インターネットの世界(Web)と企業内情報基盤の世界(エンタープライズ)は全く違うのである。

Webとエンタープライズの違い

 それでは、Webとエンタープライズ、いったい何が違うのであろうか。

 一つ目の違いはWebが「一部の新しいもの好き」のためのシステムなのに対して、エンタープライズは全ての社員が使わなくてはならないということである。Web2.0のサービスを使っている人の多くは、テクノロジーが大好きで、役に立つかどうかよりも、ワクワクするかどうかで物事を判断する人たちだ。Webでは数億人のユーザーがいるので、そのうちの0.1%でも積極的に使えば、コンテンツも十分に溜まり、面白い体験も起こってくる。これが、Web2.0の世界でいう「ロングテール」だ。

 しかしエンタープライズは、「新しいもの好き」だけを対象にすればいいシステムではない。少なくとも社員の半分以上がシステムを日常的に使わなくてはならない。もし、電子メールが社員の30%程度にしか普及していなかったら、メールなどないほうがコミュニケーションは楽に済むだろう。エンタープライズでは利用率が50%を超えると、途端に利用者が増えていく。80-90%まで普及が進めば、インフラとして機能してくる。エンタープライズでは「ロングテール」ではなく、「80%のマジョリティー」が使うシステムにならなければいけないということが、Webとの大きな違いである。

 二つ目の違いは「目的」である。人はなぜWebを使うのか。それは、便利で楽しいからだ。友達とおしゃべりできて楽しいからmixi3を使い、自己顕示欲が満たされるからWikipedia4に知っていることを書き込み、本を読んで感動したらamazonのブックレビューを書く。あくまで、個人的、自発的な動機である。一方、エンタープライズの目的はあくまで業務の遂行だ。売上を上げる、コストを下げる、納期を守る、お客様を満足させる。ビジネスには常に目的があり、その目的を達成する手段としてエンタープライズを使う。そこに楽しいかどうかの判断基準は入らない。重要なポイントは、目的が達成されるかどうかである。

 このようにWebとエンタープライズでは、そもそもが違うために単純にWeb2.0的ツールの導入がエンタープライズ2.0とはならないのである。

図1:Web2.0とエンタープライズ2.0の違い

エンタープライズ2.0を模索する

 「それでは、Web2.0はエンタープライズには関係ないの?」というと、そんなことはない。Web2.0のテクノロジーやコンセプトはエンタープライズに大きなインパクトを与える可能性を秘めている。ただ、そのインパクトはWebの世界とは全く異なったものになる可能性が高い。

 本稿ではWebとエンタープライズあくまで、本質が異なるという前提に立ちながら、Web2.0がエンタープライズにどのようなインパクトを与えるのかというテーマを扱ってみたい。そして、「Web2.0のテクノロジーやコンセプトによりインパクトを受け、次世代に進化するエンタープライズITの方向性」のことをエンタープライズ2.0と定義し、その全貌を探ってみたい。

1)SocialText
複数のユーザーが共同で情報を編集できるwikiの機能を、 企業向けにパッケージ化したサービスを提供する企業

2)Zimbra
メール機能、カレンダーやアドレス管理などのグループウェアの機能をWebアプリケーションとして企業向けに提供する企業

3)mixi
株式会社ミクシィ、および同社が運営する、国内最大級のシェアを持つソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である。日記やユーザーが自由につくれるコミュニティの掲示板を使ってユーザー同士がコミュニケーションを行うサイトである

4)Wikipedia
利用者が自由に執筆できるインターネット上のフリー百科事典。日本語版では約26万本の記事が掲載されている。