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Summer 2006
吉田 健一
(よしだ けんいち)
戦略コンサルティング会社を経て、リアルコム社BCGディレクター。KM・情報共有・企業変革コンサルティングをソニー、NTT、丸紅等の国内外の大手企業に対して手がける。
ナレッジの見える化が現場力を高める
~ 現場の情報・ナレッジ武装による問題解決力の向上 ~
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取締役
吉田 健一
企業を取り巻く環境変化が一段と激しくなり顧客の要求が多様化する今日、「見える化」による現場の問題解決力の強化が、組織力を高める上で必要不可欠になりつつある。本稿では「見える化」を実践する具体的な方法論を事例に基づき紹介していく。
1.なぜ今、「見える化」なのか?
「見える化」というキーワードがビジネス界に広まりつつある。「見える化」は、もともとトヨタ生産方式で「カイゼン」を行う際に品質や生産性指標を可視化することを指す製造現場の用語であった。ところが、遠藤功氏が「見える化1」という書籍でそのコンセプトを世に紹介して以降、企業競争力強化の処方箋として注目を集めるようになった。なぜ今、「見える化」なのか。その背景には企業の組織環境の大きな変化がある。例えば、あなたの会社ではこんな問題が起きていないだろうか?
- 現場の情報が反映されるスピードが遅く、何をするにも動きが鈍い
- 他の現場が実際に何をやっているかわからず、情報の風通しが悪い
- 部門間の壁が高く、部門に閉じた仕事のやり方を好む
- 組織横断的な課題解決がうまくいかない
- 各部門で何度も同じ失敗を繰り返している
こうした問題は、ピラミッド型組織の機能不全に起因している。ピラミッド型組織とは、あらかじめ個々に定められた業務を現場が粛々と行い(分業のプログラム)、問題が発生した場合には階層構造の階段を上がって判断を仰ぐ(ヒエラルキーによる例外処理)という上位下達の仕組みだ。このピラミッド型組織は環境の変化がない限り極めて効率的に動作する。しかし、変化のスピードが速く、不確実性が高い環境下では、現場が自律的・機動的に動けないことが足かせとなる。例外処理の増加は組織内での情報錯綜をもたらし、ビジネスチャンスを逃したり、ダブルワークや非効率、トラブル・事故へとつながっていく(図1)。こうしたピラミッド型組織の限界を乗り越え、現場がスピーディかつ自律的に問題解決を行えるようにするにはどうしたらよいか。そのカギが「見える化」だ。

1)遠藤功氏著「見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み」(東洋経済新報社)同氏はオペレーショナル・エクセレンスの第一人者である。また、同氏の「現場力を鍛える「強い現場」をつくる7つの条件」(東洋経済新報社)も、見える化による現場力向上についての良著である。ご一読をお勧めしたい。
ピラミッド型組織の1つの象徴的な例を見てみよう。米国陸軍は92年、ソマリアにおける対ゲリラ市街戦で、神出鬼没のゲリラを相手に、陸上部隊、ヘリコプター部隊それぞれの情報が入り乱れて混乱に陥り、急展開する戦況に対応できないまま大きな損害を出した。大国の軍隊同士の戦争から対ゲリラ・対テロ戦へとシフトしたことでピラミッド型組織の弊害が大きな問題になっていると捉えた米軍は、94年から「21世紀の軍隊」と呼ばれる大きな組織変革に着手した(図2)。21世紀の軍隊は、ピラミッド型組織とは異なり、一人ひとりの兵士が戦場の変化を捉え目の前のチャンスを活かして自律的に戦闘に挑む新しい組織であった。「ランドウォーリアー」と呼ばれる21世紀の兵士は完全情報武装化され、各兵士は頭上にヘッドマウントモニターを完備、GPSを活用して敵味方の位置や戦力状況をリアルタイムで把握、瞬時に状況判断できるようになった。これまで本部に集中していた情報は、ITを活用して末端の「ランドウォーリアー」の一人一人にまで共有され、コミュニケーションラインは縦横無尽に結びついたネットワーク型に変化、直属の上官以外にも他の部隊とも情報を交換しながら戦闘を進めることが可能となった。
米国陸軍では、末端の兵士全員があたかも司令室にいるかのように戦場の状況や問題すべてが「見える」ことで、兵士の問題解決力を高めピラミッド型組織の弊害を打破した。これは企業組織においても全く同じである。「見える化」とは、現場の問題解決力(=現場力)を高めるために、必要な情報、業務の状況や問題点、他の現場等を「見える」ようにすることである。「見える化」により現場がスピーディかつ自律的に問題解決を行えば、ピラミッド型組織の弊害が解消され、企業組織全体としてのスピード・変化への対応力が高まるのだ。









