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砂金信一郎

砂金 信一郎
(いさご しんいちろう)

東京工業大学工学部卒業後、米系ソフトウェア企業にてソリューション開発プロジェクト責任者を務める。その後ドイツ系コンサルティング企業にて多業界のオペレーション戦略立案プロジェクトに従事。リアルコムではNotes関連製品のプロダクトマネージャーを務める。

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ノーツ導入企業における転ばぬ先の情報共有基盤戦略

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コアテクノロジーグループ プロダクトマネージャー
砂金 信一郎

棚卸しアプローチ(2):アクセスログ分析

 アンケートやインタビューは工夫次第では深い意見を引き出すことができるが、網羅性と客観性を担保することは難しい。全社向けに広くアンケートを実施するには手間がかかるし、インタビューでは個人的な思いや意見が往々にして入り込むため、現実を歪めた一部のコメントに引っ張られてしまうと誤った判断につながりかねないからだ。

 したがって、客観的事実に基づく分析が重要となる。物販の世界で言えばPOS分析ということになろうが、アプリケーションの場合トランザクションログを利用する。

 Notes/Domino標準の機能でもDB単位のログ取得、大雑把な分析は可能だが、利用状況を把握して情報共有改善の打ち手を検討するような目的で調査を行うには不十分なところがある。これはNotes/Dominoのログ取得機能が、主にシステム運用支援的な位置づけで機能提供されているためだ。

 棚卸し目的でアクセスログを分析する場合には、DB単位の大雑把なログだけではなく、文書、ユーザー単位の詳細なログが必要になる。Notes/Dominoログ分析を行うことを目的とした製品としてリアルコムがご提供しているNotesWatcherでは、コンサルティングの現場からのフィードバックを元に、文書単位の状況把握、ユーザー視点での全操作のログを取得したりすることが可能だ。以下、代表的な分析例を示す。

分析例(1):フロー型とストック型

 Notes/Dominoの利用状況によっては、数百あるいはそれ以上のDBが乱立し、日々の業務の中で活用されている。それらDBの利用状況を把握するための手段として、DB単位のアクセス数を把握するだけでは十分とは言い難い。一口にDBを利用頻度の高さ、低さで括ってしまっても、その中に含まれる文書ごとの偏りが大きい場合もあるし、発信中心・参照中心など利用される状況も異なるだろう。

 DBに含まれる文書単位でログを取得することができれば、よく使われている文書が一部に偏在している状態を「見える化」できる。利用頻度の高い文書を抽出できれば、何故それら文書の利用頻度が多いのか、その要因を探ってゆくこともできよう。逆に使われていない文書を抽出して削除・アーカイブすることで、DBの情報品質を向上させることも可能である。

 また、DBを利用した状況が作成・更新のためだったのか、参照のみだったのかを把握することで、利用パターンをフロー系とストック系に分類することができる。

 作成・更新が中心のフロー系DBの場合、業務上記録が必要な各種処理で利用されていると思われるため、入力支援機能の優劣が各個人の生産性向上につながりやすく、文書作成時の操作性に優れたNotesクライアントの利用が適している可能性が高い。

 一方のストック系DBの場合、特定部門が作成した情報を他の部門の多くのユーザーが参照するような利用状況が想定され、ポータルや検索エンジン、リンク集など情報にアクセスする仕組みを適切に整備することで、組織全体の生産性を大幅に向上できる可能性がある。また、更新処理を行うユーザーが限られることが想定できれば、全員に対してNotesクライアントの配布が必要なのか、Webベースでのアクセスで十分なのかを判断するための材料になる。

図14:文書単位でのログ把握に基づいたDB分析例

分析例(2):情報の輸出入

 この分析では情報の出し手と受け手の分布や、それぞれの経路で流れる情報の分量を「見える化」している。ある部門が作成した文書が、どの部門にどれだけ読まれているかを把握することは意外と難しい。もちろん本来情報を知り得ていなければならない「べき論」と実態との間には、多くの企業でかなり大きなギャップがある。特に、多くの社員の日常業務に影響を与える通知・通達文書の周知徹底度合いを「見える化」してみると、その惨憺たる未読ぶりに愕然とする場面に出くわすことも少なくない。

 さらに深掘りして、ある文書の周知にどの程度の時間がかかったのかを「情報浸透時間」として定期的に測定し、組織の情報伝達能力を示す指標の一つとしている企業もある。単に平均の既読率を公表するということでもよいが、時間という概念を組み込んでいるのだ。こうすることで経営陣やユーザー自身がより直感的に理解することができるようになり、時間短縮のためにどのような努力が必要なのかを真剣に考え、カイゼンしてゆく文化の醸成に役立った。その後、Webポータル導入による情報浸透時間の短縮効果を定期的に測定し、ポータル導入プロジェクトの成功評価指標の1つとしている。

 また、内部統制の強化が進む中、本来会話があってはならない部門・プロジェクト間の情報流通状況を把握する必要性はさらに高まりつつある。組織間の情報の輸出入の状況は情報共有施策のブレーキとしての役割を果たす、アクセス権の管理状況が適切かどうかを判断することにも役立つ。本来知らしめる必要のない部門への伝達が見受けられる場合には、アクセス権の制御が情報システム部の方針と異なり、現場で適切に機能していないことが要因の一つとして考えられるだろう。

図15:情報の輸出入分析例