- 現在位置
- トップ > 事例・レポート > ホワイトペーパー 『VISION』 > 情報活用の「新・お作法」がワークスタイルを革新する
Summer 2006
村田 聡一郎
(むらた そういちろう)
ディレクター
東京都立大学法学部卒、ライス大学MBA
外資系IT企業勤務、米国本社駐在を経てリアルコムに参画。ナレッジマネジメントコンサルタントとして、国内外の大手企業のナレッジマネジメントプロジェクト・企業変革プロジェクトに参画。主にIT系、グローバル、営業系のナレッジマネジメントに精通。
情報活用の「新・お作法」がワークスタイルを革新する
~ 情報洪水・コンプライアンス時代の オフィスワーカーの働き方とは ~
------------------------------------------------------
ビジネスコンサルティンググループ ディレクター
村田 聡一郎
会議の何が問題なのか?
長い会議に嫌気がさしたことはないだろうか。
そもそも何のために集まったのかすら共有されないまま会議が始まる。いざ議論が始まると、そのうちそもそも何について議論していたのかもわからなくなってしまう。それでも会議が続けられ、予定時間を大幅に過ぎたところで結論があいまいなまま会議が打ち切られる。会議中に決まったToDo(やるべきこと)もいつの間にか忘れられ、次の会議でまた同じToDoが発行される。最終的には、会議がなぜうまくいかないのかを話し合う会議すら開かれるようになり、会議ばかりでプロジェクトが一向に進まない...
程度の差こそあれ、このような悲惨な会議が、実際に多くの組織で繰り返されているのが現状である。このような生産性の低い会議がどうして繰り返されてしまうのだろうか。
「2つの議事録ドリブン」が支えるエクストリーム・ミーティング
こうした世の中の会議の問題を解決し、より生産的な会議を実現するためのプラクティス(実践的な方法)が、株式会社サルガッソーの鈴木健氏が提唱しているExtreme Meeting(究極の会議、以下XM)である。名称は一見奇抜だが、実際にはXMはごく理にかなった「会議革命」の手法である。1)
1)会議にも様々な種類があるが、組織で実際に行なわれている会議の80%は、日々の進捗を確認し問題を解決する「たたむ系」の会議である。XMはこのたたむ系会議にターゲットを絞っているので、ブレスト会議など「ひらく系」の会議には向かない。
XMの中核をなすマスタープラクティスは、「2つの議事録ドリブン」である(図1)。

1.会議の議事録ドリブン(Minutes-driven meeting)
XMの中でも最も重要なプラクティスは、議事録作成を中心に会議を進行する議事録ドリブンという方法である。会議は、会議の目的、ゴール、アジェンダ(議題)をプロジェクタで投影し、参加者みんなでそれを確認することから始まる。会議での発言はその場でどんどん書き込んでしまう。みんなで議事録を書くことにより参加者で議事進行を共有し、会議の終了時点ではとうとう議事録を完成させてしまう。
この議事録ドリブンという手法は、「会議とは議事録を共同で作成する作業である」と、会議の概念自体を再定義してしまう。会議のアウトプットは議事録である。極端に言えば、会議終了時点で全員が内容を確認ずみの議事録が完成していない会議は、何もしなかったのと一緒であると考えるのである。
2.プロジェクトの議事録ドリブン(Minutes-driven project)
会議中だけでなく、会議が終わった後も議事録ドリブンは続く。次の会議が開催されるまでの間に、議事録に書かれた結論やToDoに基づいて、各メンバーはタスクをこなしていき、次の会議の議事録のアジェンダを共同でつくっていく。そして次の会議がはじまるときには、共同でつくられた未完成の議事録がある程度できあがっており、会議ではこれを完成させて仕上げる。これがプロジェクトの議事録ドリブンだ。
XMの2つの議事録ドリブンを実践することにより、会議の進行に劇的な変化がおきる。XMは言ってみれば、「お作法をビルトインした会議」、「正しいお作法が身に付く会議」なのである。

以下、XMの主なプラクティスを紹介する。
ゴールの共有(shared goals)
会議にはゴールが必要である。ゴールとは、「何が達成されたらその会議が成功なのか」が定義されたものである。「来年度の予算について」はテーマだがゴールではない。来年度の予算について「ヒアリングする」のか、「方針だけを決める」のか、「完全に決める」のか、がゴールである。
アジェンダにテーマが含まれていることは多いが、それだけでは不十分だ。テーマの共有だけでは、参加者の頭の中で落としどころのイメージがばらばらなままで、まだ議論しなくてもいいことを長時間議論したり、必要な議論が落ちたりする。ゴールを決めることによって初めて議論の脱線を防ぐことができるのだ。
会議を主催した人がゴールを決めていても、会議の参加者全員がそれを認識しているとは限らない。ゴールは決定されていることが重要なのではなくて、共有されていることが重要なのである。ゴールを共有するための最もよい方法は、会議の冒頭に必ずゴールを読み上げることである。その場で参加者からゴールを変えたほうがいいかもしれないという提案があるかもしれない。いずれにしても、ゴールの設定を全員が共有することによって、会議に参加する全員が、はじめて同じ目標に向かって進んでいくことができる。
会議中にゴールを忘れてしまうことも多いので、みんなが見ているホワイトボードやプロジェクタに、ゴールを文字として書き起こしておこう。
ゴールは、会議ごとにひとつではなくテーマごとに決めるべきだ。一つの会議で一つのテーマが議論されるとは限らず、まったく関係のないテーマが複数議論される進捗会議もあるからだ。
一度に一つのトピック(onetopicatatime)
議論が迷走する最も大きな原因は、ある一つのトピックについて議論しているときに、いつの間にか別のトピックが話題になり、またしばらくすると別のトピックに飛び移ったりすることである。一つ一つのトピックで結論が出ていないのに別のトピックに移動すると、結論の出ないまま時間を消耗し、あとは憔悴感が残るだけだ。
たとえ相互に依存関係があるようなテーマについて議論するときでも、複数の細かいトピックに分けて、議論する最適な順番を考えてみよう。そして、一度に一つのトピックを議論する。参加者の誰かが別のトピックを話しだしたら、「それは別のトピックだから後で話そう」と注意する。もしもまだトピックとして挙げられていなければ「ではいまの問題を、新しいトピックとして追加して後で話そう」と言って、議事録に追加する。そうすれば、自分の話したことが議論すべき内容としてみんなの前で登録されるわけなので、その人も安心して今話すべき元のトピックに戻ってくれる。
議事録の共同注視(joint attention on the minute)
「一度に一つのトピック」はとても重要だが、実践しにくいプラクティスのひとつだ。これをうまくやるためは、議事録を参加者全員が共同注視する方法が有効だ。みんなが注視できる大きな議事録は、ホワイトボードや模造紙、プロジェクタにパソコン画面を投影する方法などによって実現できる。
議事録を共同注視すれば、書記のペンやパソコンのカーソルの場所によって、いまどのトピックを話しているのかを全員が意識することができるので、自然と脱線が少なくなる。
会議室の形も重要だ。通常の会議テーブルは対面に座るので、議論は人対人の対決になってしまう。そうではなくて、一つの議事録を注視しやすいように半円形に椅子を並べたり、セミナー形式の部屋を使う。そうすることで、「全員が力を合わせてひとつの目的に向かって進んでいる」という雰囲気が醸し出される。
意味の明確化(cleardefinitions)
いま話されていることが、意見なのか、結論なのか、ToDoなのか、雑談なのかを明確にする。ある有力な意見が場に出された後に、全員が納得している雰囲気なので話題を変えると、ある参加者は「決まった」と思い、別の人は「決まっていない」と思ってしまうことがある。あいまいなままに次のトピックに行ってはならない。
議事録の共同注視はこのためにもとても有効なプラクティスだ。結論になったものは【結論】と書く。すると、そこに書かれた文章の一言一句に重みが増してくるので、「ちょっと待って。それはまだ結論は早いと思う」「いや、私が言ったことはそういう意味ではなくて、その言葉の前に『一部』という言葉を入れてほしい」などという発言がでてくるに違いない。正確な議事録が自動的にできてくる。
特にToDoに関しては明確化が重要だ。「誰が」「いつまでに」「何を」の3つが明確でないToDoは、絶対に実行されないからだ。
議事録の共同所有(collectiveminutesownership)
議事録は、プロジェクトメンバー全員のものである。会議の前であっても、誰でも議事録に書き足すことができ、誰でも議事録を読むことができる環境をつくろう。会議で何を話すかというトピックの選定にメンバー全員がかかわることができれば、問題が深刻になる前に全員の頭をよせて対策をたてることができる。
XMを実践し始めてしばらくすると、やがて皆がやり始めるのが、「議事録に先に意見を書き込んでおく」という行動である。会議中に自分の意見を述べると、それを記録係が議事録に打ち込んでくれるわけだが、それには時間がかかるし、自分が意図したとおりにきっちりと書いてもらうにはますます時間がかかる。それならいっそのこと、あらかじめ自分で書いてしまって、会議の場ではそれを読みあげるだけにしよう、と思うのは自然なことだ。こうして、会議が始まる前から、会議が実質的に始まることになる。皆が自分の意見をあらかじめ書き込んでおけば、会議の密度は濃くなり、時間は短くなる。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
XMでは、この他にもさまざまなプラクティスを提唱している。また、「議事録ドリブン会議」をサポートするWebツール「サルガッソーXM」の開発にも着手しており、まもなくテスト版を公開できる予定だ。興味を持たれた方は、http://xm.sargasso.jp/にアクセスしてみていただきたい。
XMはプロジェクタさえあれば、今日から誰にでも実践可能な「会議革命」である。あなたの職場で、ぜひ試してみてほしい。その効果はすぐに明らかになることだろう。







