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吉田健一

吉田 健一
(よしだ けんいち)

CMO(最高マーケティング責任者)
戦略コンサルティング会社を経て、リアルコム社CMO(最高マーケティング責任者)。KM・情報共有・企業変革コンサルティングをソニー、NTT、丸紅等の国内外の大手企業に対して手がける。

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情報共有ROI
~情報共有で確実に効果を実現するための方法論~

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CMO(最高マーケティング責任者)
吉田 健一

 企業組織において「情報共有」の必要性が叫ばれて久しい。しかし、その投資対効果(Return On Investment:ROI)は測定困難なものとして片付けられ、効果を出すことを放棄している状況が広まっていた。ところが近年、「情報共有のROIは測定できる」、そして「情報共有の効果は大きい」という新たな潮流が世界的に起こりつつある。本稿では、国内外の先進事例を紹介しながら、情報共有におけるROI測定の方法と、ROIを高めるための具体的方法論を紹介する。

1. Information Sharing Means Money ~情報共有で経営効果を出す~

情報共有は儲からない?

 「情報共有」という言葉を企業経営者の皆さんはどのようにとらえるだろうか? あまり「ピン」ときていないに違いない。

 多くの企業経営者が「情報共有」に対して持っている印象は、「総論賛成だが、具体的に着手する気にはならない」「面白いが、お金の匂いがしない」といったことではないだろうか。こうした状況はひとえに「情報共有」がこれまで企業経営に対して具体的成果を実現できなかった、すなわち「情報共有のROI」が低かったことに起因している。

「Information Sharing Means Money」:情報共有で経営効果が出る

 ところがその「情報共有のROI」が世界的に再び注目されつつある。キーワードは「Information Sharing Means Money」、すなわち「情報共有によって経営効果が出る」という事実が広まりつつあるのだ。

 2002年10月に「KMWorld2002」 という情報共有の世界的なカンファレンスが米国シリコンバレーで開かれたが、そこで多く語られたのが「経営効果」であった。そこでは、定性的な効果だけでなく、定量的な効果も数多く発表されている。例えば、下記の各社は情報共有によって大きな成果を上げている。

  • 化学品メーカーのバックマン研究所ではR&D生産性向上を目指した情報共有を実施し、新製品の売上比率を情共有を推進する以前の10%から50%へと向上させると同時に、顧客対応スピードを数日間から数時間へと改善させた。
  • 石油メジャーのシェブロンでは情報共有によって、6,500万ドルのエネルギー利用コストの削減を実現した。
  • 半導体メーカーのテキサスインスツルメントでは、世界13の工場における情報共有を行うことで、15億ドルの製造キャパシティーを創出した。

 また、2003年10月に欧米大企業の多くが加盟している非営利組織APQC(アメリカ生産性品質センター)が、「Measuring the Impact of Knowledge Management」と称して「情報共有の効果を測定する」調査を実施した。この調査には、ヒューレットパッカード、IBM、インテル、ジョンソンアンドジョンソン、シェル石油、シーメンス、米国海軍、ゼロックスなどの欧米における情報共有先進企業・団体が参加した。

 その結果、先進企業各社は情報共有によって大きな経営効果を上げていることが明らかになった(図1)。各社の情報共有による経営効果は平均1,500万ドル、参加者一人あたり357ドル、ROIは200%以上という数値が発表された。

[APQCスタディにおける各社のROI]

情報共有の新しい潮流

 それでは、なぜこれまで実現できていなかったROIが実現できるようになったのか。欧米各社の先進事例を見ていくと、これまでの情報共有とは異なる2つの新しい視点があぶり出されてくる。

新しい視点(1):Data CentricからPeople Centricへ

 一つ目の新しい視点は「People Centric」である。これまでの情報共有というと、「情報=データ」といった「Data Centric」なとらえ方が多く、とにかく書類をデータベース化しよう、そしてそれを検索しようという発想が見出った。

 しかし、前述のAPQCの調査によれば、経営効果を上げている情報共有手法の多くは、「Community of Practice(知識共有・深堀のための実践コミュニティ)」「Best Practice Transfer(ある組織の好事例を他組織に横展開する)」といった「人の働き方」「人と人とのコラボレーション」に注目した手法、すなわち「People Centric」な手法によって効果がもたらされていることが明らかになった(図2)。

[APQCスタディにおける各社の情報共有の手段の種類]

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