注目が集まる背景
現在、研究開発の新たなアプローチとして注目されているのが、「オープンイノベーション」という手法である。この背景には、リーマンショック後の世界同時不況がある。
製造業においては、従来研究開発費は「長期的な成長エンジン」として業績悪化時にもある程度の投資・人員を確保されてきた。これが、わが国の製造業が空洞化を免れてきた一つの理由である。しかし、世界同時不況は、企業に研究開発費を「聖域」として残しておく余裕を与えていない。
しかし、研究開発費を切り詰めることで新製品・サービスの開発力が落ちてしまえば、業績のさらなる悪化とリストラの悪のサイクルに陥ることは容易に予期できる。「研究開発費を抑制しつつ」、「新製品・サービスの開発力をどう維持向上するか」、という課題、つまり、研究開発の投資対効果向上をより短期的に実現させる手法として、「オープンイノベーション」がにわかに注目されてきたのである。
オープンイノベーションとは
提唱者、ヘンリー・チェスブロウ教授は、「オープンイノベーション」をこう定義している。
自社のテクノロジーを発展させるために、社内のアイデアとともに社外のアイデアを活用し、市場の進出にも、社内とともに社外を経由したルートを活用すべきだということを想定したパラダイムである。1
【オープンイノベーション下の案件の流れ】

自社の強みに集中し、他の機能は低コストで高レベルのサービスを利用するため、外部者にアウトソーシングする、というのは製造業でも設計・生産・物流のプロセスでは、もはや「常識」となっている。オープンイノベーションは、いわば「研究開発のアウトソーシング」といえ、P&GやIBMなどがこの手法を適用し研究開発能力を大きく改善している。
オープンイノベーションの構成要素として、
オープンイノベーションが研究開発の投資対効果に及ぼす影響
最後に、オープンイノベーションは、どのように研究開発の投資対効果を向上させるのだろうか。
研究開発の投資対効果は
研究開発の投資対効果 = 新製品売上/研究開発投資
で表される。この数式はさらに
= 案件数/研究開発投資 x 市場投入数/案件数 x 新製品売上/市場投入数
(1)投資あたり案件数 (2)市場投入確率 (3)市場での成功確率
と分解できる。オープンイノベーションの適用により、(1)社外アイデアの導入により、(2)を社外のルートを利用した上市により、それぞれ向上させることで結果として投資対効果が向上する、というシナリオである。((3)はマーケティング部門の機能である))
本稿では、オープンイノベーションの背景と効果を具体的に解説した。実践事例については、ホワイトペーパー『VISION』及びダイヤモンドオンライン『アウトソーシングを超えた社外との共創! P&Gのオープン・イノベーション大作戦』
をご参考頂きたい。
1) Chesbrough,H.W. "Open Innovation: The new imperative for creating and profiting from technology"
(ビジネスコンサルティングユニット マネージャー 林 宏典)
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